2019/03/29
「あなたたちの腕にかかっているからね」。宮城県産ブリの切り身を仕分けする生産ラインで朝礼の声が響き渡る。鋭いまなざしで聞くのはインドネシア人の技能実習生だ。
東日本大震災の津波被害を受けた宮城県塩釜市。しかし漁港や水産関連施設の損壊は限定的だったため、周辺地の生産も請け負う。震災翌年には食料品製造業の出荷額が以前の水準を超えた。一方、労働力不足は深刻で、外国人が穴を埋めている。
改正出入国管理法が4月から施行される。外国人の単純労働を認める「特定技能」の資格を新設し、許可された活動範囲内で転職も可能となる。受け入れる企業や日本という国が積極的に選ばれるためには喫緊の対策が必要だ。「質の高い人材を毎年確保するのが大変」。同市に加工場を構える「ぜんぎょれん食品」では約90人いる従業員のうち2割が実習生。さらに増やすことも検討中だ。彼女たちはブリの三枚おろしも1分程度で手際よくこなす。
フィカ・スリスティヤニさん(21)は「日本人は協力して作業を早く終わらせる。勉強になります」とやりがいを感じている。貴重な戦力だが、20歳前後で多くが結婚などを理由に3年で国に戻る。
(日本経済新聞 3月22日)
外国人労働者に対する行政の支援体制が進んでいるが、見過ごされがちなポイントは、母国の家族との関係である。家族との関係づくりには出国前から取り組んでおきたい。
外国人労働者問題を海外で調査した大学教員は「本人が何を望むかも大事ですが、親御さんが何を望むかもすごく大事で、私の知る限り、上手くいっている企業は本人の家庭に上手くコミットしています」と語る。
一方、外国人労働者の増加で懸念された問題のひとつに、治安の悪化がある。だが、この懸念はイメージに由来し、外国人労働者の増加と犯罪件数の因果関係は実証されていない。
警視庁関係者は、特定技能の施行が犯罪増加につながるとは見ていない。
「犯罪を起こしているのは大半が不法在留者である。入管の審査体制が抜本的に強化されるので、特定技能で外国人労働者が急増しても、それが原因となって治安が悪化するような事態には至らないだろう」
不法在留はおもに失踪から発生する。特定技能では転職が可能なので、外国人労働者は、職場での扱いが理不尽なら失踪を考える前に転職するだろう。
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