2019/07/09
かんぽ生命が顧客に不利益な保険を売った問題で、販売を担う日本郵便が支社ごとに独自の評価制度を設け、郵便局員に契約獲得を競わせていることがわかった。東京支社の場合、「かんぽマイスター制度」と呼び、販売実績に応じて星1~5に区分。上位の人は旅行に招待され、下位の人は「成長期待社員」として研修受講を求められる。
かんぽの保険を巡っては、販売現場の局員から過剰なノルマに不満が出ている。販売実績で報酬や処遇が異なるため、局員は高い保険料の契約獲得を優先させて、顧客に不利な乗り換えが広がった恐れもある。
複数の郵便局関係者によると、東京都内の局では2018年度にマイスター制度が導入された。新規獲得した月々の保険料に応じ、局員を5段階で分類。月平均27万円以上なら最高位の五つ星。27万~20万円は四つ星、20万~15万円は三つ星、15万~10万円は二つ星などと区分され、10万円以下は最低の一つ星となる。
星4~5だと旅行やパーティーに招かれる。一方で、星1~2は「成長期待社員」と呼ばれ、「未加入・青年層の開拓の仕方」といった営業手法などに関する研修受講を求められる。週2日は指定地域で飛び込み営業し、面談相手に礼状を書くことも求められる。(朝日新聞 7月3日)
成果主義人事が暴走すると、この記事のような事態に行き着く。表彰制度も成果主義人事の行き着く果てかもしれない。
社員のモチベーション向上策として表彰制度を設ける企業が、とくにベンチャー企業で目に付く。表彰式はホテルで派手なパーティーとセットで開かれ、そのシーンの映像を就職説明会で学生に見せてPR材料にする企業もある。
格別の実績を上げたのなら、給与や賞与に反映させればよいのだが、それだけは十分ではないらしい。全社員の前でスポットライトを当て、英雄として称賛し、他の社員から憧憬の的になるようにセットすることで、当人のモチベーションが俄然高まってゆくという。
取材先でこの映像を見せられて「凄く盛り上がるんですよ!社員は表彰式の檀上に上ることをめざして1年間頑張るんです」と広報担当者に説明され、さらに「どんな印象、持ちました?」と聞かれた。
「ホンネを言っていいですか?」と断わりを入れたら、怪訝な表情で「ええ、どうぞ」。そこで「集団で熱狂的になる光景は、どこか気持ち悪くないですか?」。広報担当者は「それはないでしょう!」と苦笑い。
皆が熱狂しているときにノリの悪い社員は“好ましからざる社員”と見なされかねないそうだ。こういう会社では、ルール遵守よりも収益追求を優先させる土壌が形成されやすい。
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