2018/11/29
日産自動車は22日午後、取締役会を開き、金融商品取引法違反の疑いで逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者(64)を代表取締役会長から解任するとみられる。「コストカッター」と呼ばれるほど厳しいリストラ策は多くの社員の人生を変えた。2008年のリーマン・ショック後、派遣切りに遭った男性はゴーン会長が手にした巨額の報酬を「労働者を犠牲にして得た金だ」と憤る。「自分たちはコストではない」という思いは、今も変わらない。
男性は阿部恭さん(55)。大学でデザインを学び、大手自動車メーカーで正社員として働いた。退職して独立後、03年秋から日産の開発拠点、テクニカルセンター(神奈川県厚木市)で派遣社員として働いた。
任された仕事は車のデザイン。職場の同僚は、正社員、派遣社員の壁がなく、仲間として接してくれた。ゴーン会長の「開発を急げ」「発売を前倒しにする」といった一声で現場が混乱する様子も目にした。「ゴーンには右向け右、の会社なんだな」と感じた。それでも「日産の車を造っている」という誇りはあった。
(毎日新聞 11月22日)
カルロス・ゴーン容疑者の報酬がグル―バル企業CEOの報酬に比べて高額かどうかという比較論よりも、2万人もの人員削減を実施しながら億単位の報酬を得ていることが問われてしかるべきだ。
2万人の総人件費の一部がゴーン容疑者の報酬の原資になったという見方もできる。リストラされた側からすれば、自分たちを路頭に迷わせたことが経営実績として評価され、しかも高額な報酬を得ていることは言語道断だろう。
日本の企業文化において、これだけのリストラを断行する場合、社長は無給で働くことも珍しくない。それが雇用主としての道義なのだ。
従業員を路頭に迷わせながら、自分が高給を得ていては、社長と従業員が利益相反関係になってしまう。欧米ではともかく、日本では通用しない関係だ。その典型が日産自動車で、長期にわたってゴーン容疑者に食い物にされてしまった。
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