2018/11/21
政府は70歳までの雇用機会拡大の検討を始めました。働き手不足を補うとともに社会保障の担い手を増やす狙いです。確かに元気なシニアは増えていますが、年配者がいつまでも職場で実権を握っていると組織の若返りが滞ります。特に難しいのが処遇です。管理職を続けてもらうか、後輩に譲ってもらうか。世代間闘争にもなりかねない難題に企業も悩んでいます。
「高齢者の希望・特性に応じて、多様な選択肢を許容する方向で検討したい」。安倍晋三首相は10月22日、政府の未来投資会議でこう発言し、70歳までの就業機会の確保を図りたいと表明しました。現在企業は社員を65歳まで継続雇用する義務を負っています。この法制度を改定し、70歳まで働き続けられる道筋を企業に求める方針です。シニアの雇用機会が広がれば、人口減少が深刻な日本の人手不足解消に役立ちます。
経団連の2015年の調査では、企業の45%が役職定年制を導入しています。これは定年前に管理職から退いてもらう仕組み。狙いは組織の若返りです。半面、役職定年をきっかけにモチベーションが一気に下がったという事例もよく聞きます。組織の若返りか、シニアのやる気か。入社時の想定よりも長く働くことになる“居残りシニア”の処遇は先進企業の間でも対応が割れています。
(日本経済新聞 11月13日)
「人生100年時代」「生涯現役社会」。このキーワードの普及とともに元気高齢者が増えることは喜ばしい。職場でも熟練スキルを若手社員の指導に継承することが望まれている。
一方で、高齢の役員と社員が第一線で働きつづけると、組織の新陳代謝に支障が出やすい。次世代に権限を委譲して、次世代の社員をサポートする側に廻れば新陳代謝を進めながら熟練技能を継承できるが、かつての部下に仕えることに抵抗をもつ人は多いという。マインドリセットの必要性を理解していても、マインドに由来するだけに理屈どおりには実行できないのだ。
とくに懸念すべきはオーナー社長の進退である。もともと生涯現役派が多いが、政府が生涯現役社会を掲げたことで、一向に世代交代に入らない人が増えるのではないか。オーナー社長にとって、生涯現役は生涯権限保持に等しい。仕事よりも楽しい活動があれば潔く退任できるが、仕事第一の人生を送ってきたオーナー社長に、そんな人はめったにいない。
定年延長には組織体質の老化という問題も潜んでいる。
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