Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

中小企業年休「取得なし」4人に1人、連合総研調べ

20181120

連合系のシンクタンク、連合総研が実施した調査によると、従業員100人未満の中小企業で働く4人に1人が過去1年間で年次有給休暇(年休)を全く取得しなかった。残業時間が長い人ほど年休を取得できていないという。企業には2019年春から年5日の年休を取得させる義務が課されるが、従業員の就労環境改善など喫緊の課題は多い。
調査は10月1~5日に首都圏と関西圏の10都府県に住み、企業に勤める20~64歳2000人にインターネットで実施。年休の権利を得てから1年間で実際に取得したかどうかを聞いた。「まったく取得しなかった」との回答は、従業員数100人未満の企業に勤める人の24.8%。100~999人は14.8%、1000人以上は7.7%で、規模が小さい企業ほど取得できない傾向があった。人手不足を背景に休みづらい職場環境がありそうだ。
1カ月の残業時間が45時間未満の従業員のうち「まったく取得しなかった」と回答した人の割合は11.8%。これに対し45時間以上80時間未満では32.4%、80時間以上は36.4%だった。
(日本経済新聞 11月12日)

人手不足解消策のキーワードに生産性向上が挙げられているが、中小企業ではそう簡単に取り組めないという。たとえば大手企業ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の普及で、間接部門の生産性が飛躍的に向上しつつある。
RPAとはロボットによる事務処理業務を効率化する技術で、24時間稼働も休日稼働も可能である。普及にともなって間接部門の社員は労働時間を削減できるどころか、余剰人員も大量に発生する。すでに余剰人員を間接部門から直接部門に異動させている企業もあるほどで、人手不足ゆえに有給休暇の取得が進まない中小企業とは対照的だ。
一方、生産性とは別に、長時間労働を美徳とする組織風土が改善されていない企業も多いのではないか。政府が働き方改革を喧伝したところで、連綿と継承されてきた組織風土の改善は容易ではない。「労働時間の短縮や有給休暇の取得促進は大企業の話」と片付けられてしまいがちだ。労働時間にも格差が発生している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。