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ゆとり労働で“働き方世代”誕生? 残業短縮がもたらす弊害

ono20190919

「働き方改革」で管理職は部下の仕事を肩代わり。部下の負担は減り定時に帰れるゆとりが生まれたが、各所で弊害が生じている。
 部下のほうは、いつしか残業ゼロを当たり前だと思うようになったと、大手商社で働く40代前半の課長は明かす。取引先との会食の席で、部下のスマートフォンがメールの着信音を鳴らした。だが会が終わってもメールを確認しない。わけを聞くと、
「勤務時間外ですから」
 続けて、
「この接待が残業にならないのは、どうしてですか?」
 かつてモーレツの代名詞だった商社。課長はため息をつく。
「若手社員は仕事を楽勝だと思っていますよ」
 だがハラスメントの意識も高まり、強く指導しにくい。
「自分は修羅場をくぐって育ってきた。それ以外の部下教育法は知らないですね……」
 一方、同じ会食の状況でメガバンクの20代半ばの行員はメールを確認した。だが困った顔をして、上司の次長に「返信してもらえないですか」と頼んだ。
「勤務時間外にメールを返信した記録が残ります。次長が労働組合に『時間外も働かせている』と責められてしまう」(AERAdot 9月13日)

この記事に掲載された事例は労働時間短縮の弊害のようにも見えるが、残業とは“残った業務”だから、本来ゼロが望ましい。残業アリを前提に業務を組み立てるか、残業ゼロを前提に組み立てるかで、勤務時間には明確な差が発生する。
働き方改革は“働かせ方改革”でもある。上司には、残業ゼロを前提に、部下に仕事を指示する姿勢が求められている。業務設計能力が試されているのだ。
上司が自分の経験をベースにすれば、思考停止状態に行き着く。長時間労働で成功を積み重ねてきた上司が、部下にも長時間労働を指示するのは、思考停止の現われである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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