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若手社員「連鎖退職」の恐怖…職場の問題とは?

6月の大阪北部地震の時のことだ。電車が軒並み止まり、出勤も困難な状況の中、ある会社の上司が「何がなんでも出てこい」と部下に指示。それに対し「非常時に社員を守ろうとしない会社は嫌だ」と新入社員7人が連名で退職届を出した――という話がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で話題になった。
話の真偽は定かではないが、社員が短期間に一斉に辞める「連鎖退職」は、今、多くの企業で問題となっているという。
連鎖退職で多いのは、同僚の退職に影響され、別の社員も退職を決意するなど「退職が退職を呼ぶ」状況だ。一人が辞めると「会社の将来は大丈夫か?」「ここにいては危ないのか?」
「私も辞めた方がいいのではないか?」――などといった不安感や絶望感が伝染してしまうのだ。
(読売新聞 8月17日)

連鎖退職は伝染病のような現象である。同期の社員が次々に辞めれば浮足立つし、モヤモヤした気分で勤務している社員には、辞めるという選択肢が舞い込んでくる。主体性の欠如といえばそれまでだが、会社側は病巣を把握して治療しないと、人員計画に支障が出てしまう。
連鎖退職の背景は若手社員がアッサリと退職する時代になったことだ。

いまや新卒入社社員の3割が3年以内に退職しているという。しかし、この現実は嘆くにおよばない。たしかに採用コストは無駄になるが、3年近く働けば、キャリアの見直しを考えたくなるのは自然の流れである。

勤務先で今後も働きつづけることに、一片の夢も描けなければ転職しやすいという労働市場のあり方は、柔軟で好ましい。企業は3年以内の退職を防ぐ施策を講ずるよりも、3年以内に3割が退職するという前提で採用計画を見直した方が現実的である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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