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まつりさん上司の電通元部長は「不起訴相当」 検察審

広告大手・電通の違法残業事件で、東京第一検察審査会は27日、過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)の上司だった元部長=退社=に対する東京地検の不起訴処分(起訴猶予)について、「不起訴相当」とする議決を公表した。議決は12日付。議決書は「会社という組織の中で、個人ができる対策は限られていた」などと指摘した。
一方で、議決書は「入社1年目で自殺した無念さ、尊い命が奪われた親族の心情は察するに余りある」とも言及している。関係者によると、検審は担当検事から直接説明を受けるなどして、慎重に検討を重ねた。
元部長は、高橋さんに違法残業をさせたとして労働基準法違反容疑で2016年12月に書類送検され、東京地検が17年7月に不起訴とした。一方、法人の電通に対しては、検察から略式起訴を受けた東京簡裁が異例の正式裁判を開くことを決め、17年10月に罰金50万円の有罪判決を言い渡し、刑が確定している。(朝日新聞デジタル 7月27日)

経済界・労働界を挙げての働き方改革の原点は、電通で発生した過労自殺である。東京第一検察審査会が議決した「不起訴相当」は、個人の責任を問いにくい前例になりかねない。責任の所在を特定しない限り、労務事件の真相究明と再発防止は報告書の作成にとどまってしまう。
検察審査会は「会社という組織の中で、個人ができる対策は限られていた」と指摘したというが、元部長の担当役員に対しては、この指摘は当てはまらないのではないか。
そもそも個人の責任が問われなければ、社内への抑止効果も働かない。法人に有罪判決を下して罰金を徴収しても、空気を裁くようなもので、社内に緊張感は生まれない。
 

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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