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違法残業監視に民間の力

厚生労働省は7月から働き方改革の一環として、民間の力を借り、残業に関する企業の監督体制を強化する。具体的には残業をさせる際に労使で結ぶ「三六協定」の届け出がない会社に対し、厚労省の委託を受けたコンサルテング会社などの事業者が調査票を送って現状を記入させ、回答に応じて専門家が指導する。同省は事業者として社会保険労務士らでつくる団体などを想定している。 労働基準監督官による従来の立ち入り調査と組み合わせることで、手が回らなくなった多くの企業に目を光らせる狙い。
労働基準法は労働時間を「1日8時間、週40時間」などと定め、それを超えて働かせるには同法36条に基づき協定を結ぶ必要があるが、協定がない違法状態で残業をさせている企業は多い。
(日本経済新聞 6月25日)

労働基準監督署の立ち入り調査が一層強化されることを望んでいる労働者は多いだろうが、とくに病院勤務医は強く望んでいるかもしれない。病院経営者にとって、医師の労働時間規制は医療現場の機能低下を懸念する材料だろうが、長時間労働を強いられている勤務医にとっては朗報ではないのか。

2012年の調査だが、総務省が発表した「1週間の労働時間が60時間を超える雇用者の割合」を見ると、1位が(歯科医師と獣医師を除く)で41.8%、2位が自動車運転従事者で39.9%、以下、生活衛生サービス職業従(35.1%)、飲食物調理従事者(34.4%)とつづく。
この調査では、医師の4割が過労死時間を超えて働いている実態が明らかになった。医師固有の労働規制に医師法19条で定められた応召義務があるが、ここにメスを入れない限り、医師の働き方改革は実効性をもたないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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