2018/05/23
独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が昨年12月~今年1月、65歳以上に定年を延長した1840社を対象に調査をしたところ、定年引き上げの理由(複数回答可)は「人手の確保」(75%)が最も多く、「60歳を超えても元気に働けるから」、「優秀な社員に引き続き働いてほしいから」と続いた。
大手企業では、サントリーホールディングスや大和ハウス工業、ホンダなどがすでに定年の延長に踏み切った。昨年7月には明治安田生命保険が「30代の社員が少なく、10年後に管理職が不足する可能性がある」とし、平成31年からの延長を決めた。
定年延長の利点は、高齢社員が持つ高度な技能や豊富な人脈を若手社員に引き継ぐとともに、安心して働ける環境を整備することで人材流出を防ぐことにもある。
一方、定年延長は企業にとっては総人件費の増加につながる。調査では、なお約80%の企業は定年を延長せず、嘱託社員などとして再雇用する仕組みを採用。国は定年を延長した企業への助成制度を設けているが、導入をためらう企業も多い実態が浮き彫りになっている。(産経新聞 5月13日)
定年延長は人手不足対策がもっとも大きな理由だが、年金制度の変更も、企業に対して定年延長を迫っている。
さる4月11日に開かれた財政制度等審議会では、厚生年金の支給年齢を65歳から68歳に引き上げる案が検討項目に示された。その背景に挙げられたのは①後世世代の給付水準の確保②高齢就労の促進③年金制度の維持・充実―の3点である。
一方、医療費・介護費の抑制に向けた健康寿命の延伸からも、社会参加の一環として高齢者の就労が促進される流れが強まっている。各種調査では、多くの高齢者が70歳まで働きたいという意向を持っていることがうかがえる。
つまり定年延長は、財務省、厚生労働省、企業、労働者の4者の思惑が合致した施策である。本来、何歳まで働くか、定年後に何もせずブラブラするのかなどは本人が自由に選択すればよいだけで、国が価値観を提示すべき問題ではない。
だが、65歳以上という高齢者の区分が見直されれば、70歳を超えた常勤労働が標準になっていくだろう。
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