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医師、月150時間残業容認も 過労死ライン超す協定

京都府南丹市の京都中部総合医療センターと同府綾部市立病院が過労死ライン(月100時間、複数月平均80時間超)の残業を認める労使協定(三六協定)を結んでいたことが分かった。両病院とも「医師不足の中、救急態勢を維持する」ことを理由に挙げ、センターは産婦人科医に月150時間、綾部は全医師に月90時間以内に残業時間の上限を設定していた。医師の働き方改革と地域医療確保の両立の難しさが浮き彫りとなった。
 
京都新聞社が京都府、滋賀県内の自治体病院、大学病院で救急患者を受け入れる25病院に協定の有無や上限時間を調査した。京都府京丹後市立の弥栄病院、久美浜病院、滋賀県長浜市立湖北病院は協定を締結せずに残業をさせていたことも分かり、両市とも労働基準法に違反していることを認めた。
 
京都中部総合医療センターの産婦人科は24時間態勢で患者を受け入れるが、常勤医は3人しかいない。「現在70時間超の残業はないが、医師が減った時に備えている。住民ニーズに応えるには仕方がない」という。綾部市立病院も「残業超過を理由に急患を断るわけにはいかない」と回答した。
(京都新聞 2月9日)

産業医科大学教授の松田晋哉氏は、今年1月に都内で開かれたシンポジウムで、フランスでも問題になった医師の労働時間に言及した。

「フランスでは2000年代の初めに、週35時間労働制が医師を含む全ての労働者に適用されました。その結果、フランス全国の病院で救急部門が止まってしまうという非常に深刻な事態が発生したのです。その後、週39時間労働へと規制が緩やかになりました。医療の労働時間は提供側では決められません。相手があってのことなので、あまり高い規制を医療に求めると、問題が起きてしまうと思います」

一方で、こうも付け加えた。

「労働時間が長いと医師のメンタルに問題が発生してしまうので、労働時間の管理は必要だと思います」

 医師の労働時間は患者の病態で変動するが、それでも上限を設けないと、医療現場は崩壊しかねない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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