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大手企業にこだわる親とのパラサイト就活の実態–学生の内定辞退「オヤカク」で囲い込み

2019年卒の新卒採用の広報活動が3月1日に解禁される。だが、経団連が「1dayインターンシップ」の開催を認めたことで、インターンシップに名を借りた事実上の会社説明会がすでに始まっている。
 
売り手市場ということもあり、優秀な学生をいち早く確保したいのは大企業も中小企業も同じ。2018年は選考や内定出しが前年より早まりそうな気配だ。
 
そのなかで近年無視できなくなっているのが親の存在だ。子どもの就職先選びに親が積 極的に関与する“親子就活”が日常の風景になっている。

2017年、選考解禁日の6月1日以降に多くの企業で“内々定式”なるセレモニーがあった。内定が解禁される10月1日の内定式にちなんだものだが、すでに内々定を出した学生を一堂に集めての幹部社員との交流会、夕方の豪華な食事付きの懇親会へと続いた。そのときに渡されるのが2枚つづりの書類。1枚は本人の内定承諾書、もう1枚が親の承諾書だ。
(BUSINESS INSIDER 2月9日)

就職に親の意見が介在するのは昔からだが、この傾向が強まっているのだろうか。一昨年のことだが、2人の採用担当者から親対策を聞かされた。ひとりはITベンチャー企業、もうひとりは介護サービス会社の担当者である。
 
このITベンチャー企業は「保護者説明会」を開いている。

「親世代にはITベンチャーに対して、一発屋イメージをもっている方が多いのです。説明会に出席する父親のなかには上場企業に勤務している方もいるので、たんなるPRでは通用しません。当社は社長が中長期経営計画、人事制度、研修制度、給与体系などを説明して、株式上場を果たして公的な存在をめざすことを説明しています」
 
介護サービス会社の担当者は、深刻な事情を話してくれた。

「就職市場が売り手市場になってからは、福祉学部の学生が親から『介護業界は給料が安くて仕事がきついから、他の業界に行きなさい』と強く諭されることが多くなってきました。それでも介護の仕事をしたいという志をもって、この業界に就職する学生もいますが、それだけ強い志をもっている学生は少数派です」
 
親は相談に乗ってあげるぐらいでよいのだが、ブラック企業問題がこれだけクローズアップされると、介入せざるを得ないのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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