2017/12/29
経団連は、2018年春闘で経営側の指針となる「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)に、賃上げへの社会的関心の高まりを意識して月例賃金の3%引き上げを検討することを明記する方向で調整に入った。従来より踏み込んだ表現で会員企業に賃上げを促す方針だが、経営者の間には異論もあり、最終決着までには曲折もありそうだ。
経団連の調査では、定期昇給とベースアップを合わせた大手企業の17年の月例賃金の引き上げ率は2.34%。安倍晋三首相は18年春闘でこれを上回る3%の賃上げを経済界に要請した。
来年1月に示す経労委報告の原案では、首相によるこうした期待感の表明は「これまで以上に賃上げへの社会的関心が高まっていることのあらわれだ」と指摘し、「月例賃金において、3%の引き上げとの社会的期待も意識しながら検討を行う」と明記した。
賃上げの音頭を取るのは連合の役割だが、この数年は、安倍晋三政権が連合の役割を担っている。2019年10月の消費税10%引き上げへの地ならしなのか。あるいは支持政党の分裂状態がつづく連合の存在感を低下させ、さらに旧民進党勢力を弱体化させようと目論んでいるのか。
ただ、個人消費を底上げするには、賃上げも有効だが、優先すべき施策は非正規雇用者の正規雇用への転換だろう。たとえば就職氷河期に卒業した世代はすでに40代に入り、日々の生活に汲々とする状況を強いられている。
下流中年に中流、上流へと昇っていく機会は訪れない。健康管理にも支障をきたし、医療費や生活保護費の増大につながりかねない。非正規雇用者を減少させないと、個人消費縮小と社会保障費増大という2つの問題を深刻化させてしまう。
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