2017/09/29
違法残業があったのに必要な防止措置を取らなかったとして、労働基準法違反の罪に問われた広告大手・電通(東京)に対する初公判が22日、東京簡裁(菊地努裁判官)で開かれた。大企業が長時間残業について刑事責任を追及され、トップが法廷に立つのは異例。
法人を代表して山本敏博社長(59)が出廷し、起訴内容についての認否を問われ、「間違いありません」と罪を認めた。検察側は「自社の利益を優先させ、違法な残業が常態化していた」と指摘し、罰金50万円を求刑。公判は同日結審した。判決は10月6日。
検察側は冒頭陳述で「クライアント(顧客)ファーストで、深夜残業や休日出勤もいとわない、という考えが浸透していた」と指摘。「労働基準監督署から是正勧告を受けていたが、社員の増員や業務量の削減といった抜本的な対策を講じなかった」と述べた。
(朝日新聞デジタル 9月22日)
この初公判で検察は「会社の利益を優先して労働者の健康を顧みない会社の姿勢が引き起こした」と主張した。もっともな批判だが、「会社の姿勢」を改めるには、取引のあり方も改めることが必須だ。
たとえばクライアントが夕方に業務を依頼して、納期を翌日の朝に指定すれば、深夜労働は避けられない。(いつでも無理を聞いてくれる)という評価は、健康の犠牲と対をなしている。クライアント側は委託先の担当社員の健康管理など視野にないが、我が身に置き換えて考慮しなければ、この問題はいっこうに解決しない。
社員の健康管理を理由に、無理な要求を断われる関係を築けるかどうか。各業界でガイドラインを策定し、強制力をもって遵守する体制を固めるのは難儀だろうが、そこまで踏み込むことが迫られている。
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