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残業規制で所得8.5兆円減=生産性向上が不可欠―大和総研試算

残業時間の上限が月平均で60時間に規制されると、残業代は最大で年8兆5000億円減少する―。大和総研は、政府が掲げる働き方改革で国民の所得が大きく減る可能性があるとの試算をまとめた。個人消費の逆風となりかねないだけに、賃金上昇につながる労働生産性の向上が不可欠となりそうだ。
 
政府は働き方改革の一環として、罰則付きの残業上限規制の導入を目指している。実現すれば繁忙期を含め年720時間、月平均60時間が上限となる。
 
試算によると、1人当たりの残業時間を月60時間に抑えると、労働者全体では月3億8454万時間の残業が減る。年間の残業代に換算すると8兆5000億円に相当する。
 
残業時間の削減分を新規雇用で穴埋めするには、240万人のフルタイム労働者を確保する必要があるが、人手不足の中では至難の業だ。
(時事通信 8月21日)

いまもなお残業手当を生活給としてアテにしている勤め人は多く、残業時間の削減で所得が減るなかでプレミアムフライデーを導入したところで、消費の拡大にはつながるまい。

多くの企業では課長職に昇格した途端、残業手当がなくなり、課長代理や係長在任時よりも手取りが減るという例はどこにでもあった。残業手当を稼ぐ目的でダラダラと非効率な仕事をつづける一般社員も珍しくなく、生産性の低下と能力の停滞を招いていた。

残業手当を生活給にカウントする必要のない給与体系への改革が必須だが、基本給の増額は重荷になる。ひとたび業績が悪化すれば、人件費リスクが浮上しかねない。当然、基本給を抑制して各種手当の幅を拡大すれば、応募者に意図を見透かされてしまい、思うような採用には至らないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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