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残業命令には36協定が必須…労働者の4割「知らない」

働く人の4割超は、会社が残業を命じるには労使協定(36〈サブロク〉協定)が必要なことを知らない――。そんな実態が連合のアンケートでわかった。長時間労働への関心の高まりで、制度を知る人の比率は上がってきたが、連合は今後も周知を進める考えだ。
 
アンケートは6月に、20~65歳の働き手1千人(自営業やアルバイトなどは除く)にインターネットで実施。会社が残業を命じるには労使協定を結ぶ必要があることについて尋ねたところ、「知っている」と答えたのは56・5%、「知らない」は43・5%だった。
 
2014年の同様の調査より「知っている」は約17ポイント上がった。電通社員の過労自殺や、罰則付き残業上限が導入の見通しとなるなど、労働時間への関心の高まりが背景にあるようだ。
 
年代別では、30~50代の6割弱、60代の7割強が「知っている」と答えた。20代は49・2%と他の世代より低めだ。連合は「36協定の知識がない人がまだ多いのは残念。特に若い世代に協定の重要性が知られるように働きかけたい」(担当者)としている。
(朝日新聞デジタル 7月16日)

本来、36協定は説明会などを開いて社員に周知徹底させるべき事項だが、社員は知らないほうが会社にとって好都合である。労働基準法を遵守していれば、社員が36協定を知ったところで、警戒は無用だ。堂々と説明すればよい。

しかし、雇用に関わる権利意識の芽生えは、労務管理や人事制度の運用で何かと煩わしいのが企業側の立場である。働き方改革が進みすぎて、滅私奉公文化が解消に向かうことを怖れる企業は、意外に多いのではないか。

そうした企業では、36協定に関心を示す社員は危険分子と見なされかねず、36協定に関心をもつ社員も、協定内容の開示を求めることは慎んでいる。労使協定を結ぶ際にも、会社に従順な社員を代表に指名して、密かに結んでしまう。

36協定の締結プロセスや社員への開示に対する施策が打ち出されないと、いっこうに密約から脱しきれない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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