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「人手不足でも賃金伸びず」が世界的な症候群に

失業率が低下しているが賃金の上昇が遅く、物価の上昇ペースも緩やか、という現象が日本だけでなく世界的に起きている。

(中略)
 
景気拡大が続けば、基本的には人手不足が拡大して賃金は上昇するはずだ。ただし、近年のデジタルイノベーションの動きは、企業に省力化を促しつつ、賃金上昇を緩やかにしている可能性がある。米国の場合、4月時点の民間部門における平均時給の前年比伸び率は、3.2%だった。しかし、デパートなどの一般商店の伸び率は1.1%でしかない。米アマゾン・ドット・コムなどのインターネット通販に攻め込まれている小売業には賃上げの余裕がなく、人員削減も顕著だ。
 
金融業界の雇用にもITの影響が及んできた。昨年、中国の国有4大銀行は社員数を1.8万人削減。スマートフォンによる資金決済の急速な普及で、営業店の仕事量が減少したことが主因とされる(中国紙「中国日報」)。日本の三菱UFJフィナンシャル・グループも、今後10年程度で社員の約7%に相当する1万人の削減を検討しているという(米通信社ブルームバーグ)。
(ダイヤモンドオンライン 6月30日)

人手不足の常態化はITによってどこまで解消されるのか。AIに取って代わられる仕事は多く、この記事によると三菱UFJフィナンシャル・グループが今後10年で社員の7%を削減すれば、労働市場は買い手市場へと転換するかもしれない。
 
しかし、日本では賃上げ傾向が続くだろう。中央最低賃金審議会は同一労働同一賃金の実現を視野に入れて、最低賃金の全国平均823円の引き上げを検討しはじめた。最低賃金の遵守には労働基準監督署のチェックも厳しくなった。

都内の自動車部品問屋業の社長は「労基署が厳しくなったので、中小企業だから最低賃金を守らなくても仕方がないとはいかなくなった。コンプライアンスを遵守できない企業は時流に鈍感だから、商品開発や販売方法も従来のままで、どんどん落ちこぼれていくだろう」と身を引き締めている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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