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「院政」批判 企業動く

3月期決算企業の株主総会が本格化し、上場企業のガバナンス(統治)上の課題である相談役・顧問制度を巡る企業の動きが活発になってきた。「役割が不透明」「院政のおそれ」といった投資家の批判を受け、廃止や情報開示の強化に踏み切る企業が相次いでいる。統治の透明性が増せば株主による経営監視がしやすくなり、企業価値の向上にもつながりそうだ。
 
「一個人の独断で会社の意思決定を左右できるようなものでない」
 
28日の総会終了後に長谷川閑史会長の退任を予定する武田薬品工業。長谷川氏が会長退任後に相談役に就任することについて、クリストフ・ウェバー社長は株主に理解を求める一通の手紙を付記した。長谷川氏は相談役として会社に残っても、経営判断に影響を及ぼさないと強調した。
(日本経済新聞 6月18日)

伝統的に相談役や顧問は会長・社長経験者の名誉職だった。助言者として経営判断をサポートしてきた例もあったのだろうが、社外取締役の導入によって、相談役や顧問の機能は不要になったはずだ。個室、専用車、秘書の3点セットも浪費の対象である。
 
相談役・顧問制度を継続したい場合は、社外取締役が就任しているのに、なぜ相談役・顧問を配置するのか。それぞれの役割、業務査定、報酬の根拠なども明示して、株主総会に諮ればよい。
 
院政リスクは当人の指向性や周囲の忖度に起因するが、院政という実態がなくとも相談役・顧問という制度は、不透明感を助長させてしまう。会社から相談役・顧問への就任を請われても、当人が断わって潔く引退すれば院政問題は起こらないが、仕事以上の楽しみをもたない限り、みずから身を退くことは至難である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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