2017/02/20
電通の新入社員の過労自殺を発端に、残業時間の規制の動きが急速に強まっている。政府は、過労死ラインとされる「月80時間」を念頭に、月平均で60時間を残業の上限とする意向。しかし、この政府案に待ったをかけたのが、看護師たちだ。24時間体制の過酷な業務は、警察官や消防隊員も変わらない。医療や治安などを守るためにも彼らの言い分に耳を傾ける必要があるが、果たして過労死を防ぐ適切なラインはどこにあるのか。
(中略)日本医療労働組合連合会(医労連)は2月、「夜勤交代制労働など業務は過重である。政府案はまさに過労死を容認するもので、断じて容認できない」として、「月60時間」が過労死ラインと主張する談話を公表した。
医療や介護の分野は特殊である。警察や消防も同様だが、24時間365日の稼働が必要だ。夜勤交代制は体に有毒で、睡眠障害や循環器疾患、長期的には発がん性も指摘されている。医労連の平成25年のアンケートでは、看護師の「慢性疲労」が7割を超え、「仕事を辞めたい」も75・2%に達している。
(産経新聞 2月12日)
病院の就労環境はブラック企業よりも過酷である。入院患者の体調に異変が発生すれば、規定の時間が過ぎても帰宅できないし、いくらITツールによる遠隔医療が発展しても、まず在宅勤務は考えられない。
医師や看護師は、自分の心身を削って患者の健康回復に尽くしている。紛れもなく肉体労働だろう。都内の訪問看護ステーション運営会社の社長はこう話す。
「うちに転職してくる看護師は30歳前後が多いのですが、皆、急性期病院の当直体制で疲れきってしまい、日中勤務で週休2日を確保したいという動機で転職してきます。普通の生活をしたいわけです」
この訪問看護ステーションは、厚生労働省が増やす方針のもとに診療報酬で誘導している機能強化型訪問看護ステーションへの転換を考えていない。24時間体制が機能強化型の要件になるからだ。
社長は「24時間体制に変えたら、皆、辞めてしまうでしょう。報酬が上がらなくても、うちは看護師の生活設計を優先します」という。医療職が健康を害してしまうのは、患者も不安である。
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