2016/10/21
広告代理店最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の自殺は過労が原因の労災と認定された問題で、東京労働局と三田労働基準監督署は14日午後、東京都港区の電通本社に対し、労働基準法に基づく強制調査「臨検」に着手した。臨検後、電通の労使協定が認めていない月70時間超の時間外労働など具体的な法令違反を確認した上で是正を勧告(行政指導)する方針。悪質と判断した場合は刑事処分を求める書類を検察庁に送ることも検討する。
電通では1991年、入社2年目の男性社員が過労で自殺したことが問題化した。労働局などはこの時の反省が社内で十分生かされていない点を重視し、臨検に踏み切ることを決めた。労基法上、労働基準監督官は臨検して企業側に帳簿と書類の提出を求め、使用者や労働者を尋問できると規定している。(中略)
代理人弁護士によると、電通は社員らに月70時間を超える時間外労働を「勤務状況報告表」に記載しないよう指導していたという。高橋さんは指導に従い、昨年10月を「69.9時間」、同11月を「69.5時間」に減らして記載していた。労働局はこの点についても法令違反の有無を検討する。
(毎日新聞 10月14日)
長時間労働問題が改善されない背景のひとつに「うちの業界は特殊だから…」「うちの会社はベンチャーだから…」という思い込みがある。とくに9時―5時という定型的な勤務体制でない業界関係者には「労働基準法を守っていたら、この業界ではやっていけない」と思い込む風潮が目につくが、電通にも同様の組織風土があるのではないか。
今回の強制調査には、有名企業を対象にした一罰百戒の意図もあるのだろうが、刑事処分まで進まなければ、一件落着で忘れ去られてしまう可能性もある。げんに電通は1991年に入社2年目の男性社員が自殺し、自殺した電通社員の母親が記者会見で「命よりも大切な仕事はありません」と語っていたが、このひと言は多くの企業の社員行動憲章に明記したい意味をもつ。
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