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政府、下請け保護で中小の賃上げへ

安倍政権が中小企業の賃上げに向けた環境づくりに動いている。政府は15日、大企業が下請け企業に無理な値下げを迫るなどの商慣習を改めるよう経済界に要請した。中小企業のもうけを増やし、その分を賃上げに回すよう促すためだ。安倍政権が進めてきた「官製賃上げ」は、4年目に入って照準が中小企業に移ってきた。

安倍晋三首相は15日、日本商工会議所の会合で「中小企業の下請け取引の条件改善に全力で取り組む」と述べた。念頭にあったのは、大企業が下請けに一律の賃下げを要請するといった「買いたたき」の是正だ。

首相の発言に先立って世耕弘成経済産業相は都内で経団連の榊原定征会長と会談した。「経済界はサプライチェーン全体で適正取引を創出すべきだ」と述べ、大企業が下請けとの取引価格を不当に抑えないよう求めた。
(日本経済新聞 9月16日)

政府が大企業に要請したところで、下請け企業や仕入先企業が酷使を素直に改めるとは考えられない。大企業の仕入担当者はコストダウン目標を課せられ、その達成度合いで人事評価が下されるのだから、経営陣が政府の要請に総論賛成でも、現場は素直に追随できないのが実情ではないのか。コストダウン目標が過大であればなおさらだ。

賢明な大企業なら“利は元にあり”を実践し、仕入先との関係を利益相反でなく利益共同に導くものだ。適正利益を与え続ければ、ときに無理に応えてもらえることをわかっているのだが、これは少数派だろう。

おおかたは、利益目標達成のプレッシャーに迫られれば、仕入先に泣いてもらうことが常道であると値下げ要求に走ってしまう。この関係を改善するには、仕入先が力をつける以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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