2016/07/31
千葉県立の全6病院で、労働基準監督署の許可がないまま医師らが夜間、休日の当直勤務をしていることが21日、県への取材で分かった。人手不足で頻繁に急患に対応することが多く、待機や病室巡回など軽い労働に限られる当直勤務の原則を守れる人員態勢を病院側が取れないためだ。医療関係者は全国的にも同様の例があるとみている。
県によると、6病院のうち県がんセンターは5月、千葉労基署の立ち入り調査を受けた。県病院局は「許可を得ないまま当直をさせている現状は違法状態と認識している」とする一方、医師の確保が困難で、国が求める当直勤務をさせるための適正な態勢をつくれないとして「早急な解決は難しい」としている。
厚労省は2002年、全国の病院に勤務の適正化を求める通達を出しており「無許可の場合は違法労働となる可能性がある」としている。
(日本経済新聞 7月22日)
この問題は医師不足に起因するが、医師不足には「不足ではなく地域や診療科による偏在」という見解もある。日本医師会は偏在を主張しているが、勤務医で構成される全国意思連盟代表理事の中島恒夫氏は、さる6月5日に都内で開かれたシンポジウムで「本当にそうだろうか。日本の人口1000人当たりの医師数はOECD加盟国の平均以下である」と反論した。
中島氏は、偏在ではなく実数不足の論拠として、元東京大学医科学研究所特任教授・上昌広(NPO法人医療ガバナンス研究所理事長)研究室のシミュレーション結果を紹介した。
後期高齢者の死亡者数を「需要」医師の勤務時間(週60時間に設定)を「供給」として
向こう10~25年の需給動向を予測したところ、全都道府県で需要が供給よりも増加し、需要が5割以上増えた都道府県が約半数を占めたという。
研究室は医師数増加策を提言した。中島氏は「日本医師会の主張よりも現場の感覚に近い」と評価したが、不足か偏在かの議論は、医学部新設の認可に関わる根の深い問題である。医師に限らず、人手不足問題は立場によって見解が変わるものだが、現場感覚がもっとも信憑性が高い。
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