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流出が続くシャープ経営陣

台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下で経営再建を目指すシャープで、かつての経営幹部が相次ぎ他社に転職している。特に、液晶事業を推進してきた方志教和(ほうしのりかず)元専務執行役員(63)が7月1日付で、競合する液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)の副社長に就任。液晶・有機EL事業を軸に立て直しを狙う鴻海の戦略にも大きな影響を及ぼす可能性があり、傘下入り後の両社の連携に不安を投げかけている。
(中略)
「失敗したのだから、敵陣(ライバル会社)に行ったのは良かった」
今年6月22日、台湾・新北市の鴻海本社で開かれた株主総会。シャープで退職が相次いでいることを指摘された郭台銘会長(65)は強い口調でそう言い切った。「シャープの若手を手元に置いて教育している。新たな創業のような気持ちだ」。次世代の人材育成への熱意も語り、株主の懸念払拭に躍起となった。

シャープへの出資完了後に同社の次期社長に就く鴻海の戴正呉副総裁(64)は総会終了後、「旧経営陣は責任を取って退職していっただけだ。なぜ『人材流出』と書くのか」と日本の報道陣に抗議し、怒りをあらわにした。
(産経新聞 7月9日)

鴻海精密工業の傘下に入れば経営幹部も一般社員も切り捨ての対象になることは、当然想定済みだったろう。鴻海の経営体質にマッチするシャープ社員は、傘下に入ったことを成長機会の獲得と受け止めて奮闘するが、その一方で相当数が転職先を探しているのではないか。

すでに日本電産やアイリスオーヤマがシャープ社員の受け皿になっているが、人材確保に悩むベンチャー企業もシャープ社員を欲しがっているはずだ。キャリアコンサルタントによると「優秀な人材がサービス産業に流れる傾向にあるので、製造業の幹部人材の求人が増えています」という。

昔から「大手企業出身者は看板を外した途端、使いものにならなくなる」といわれつづけてきたが、これは俗説だ。同上のコンサルタントもこう語る。

「本人次第ですよ。活躍している人はいくらでもいます。マインドをリセットできるかどうかですが、多くの人はできています。“使いものにならなくなる”と評価されかねないことを十分自覚していますからね」

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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