2015/10/06
リストラクチャリングの原義は「再構築」だ。単なるコスト削減ではなく、何かをやめ、何かを新しくつくることで会社をモデルチェンジするというのが本来の意味であり、デュポンと GEの例はそれに当たる。
では、逆に「ダメなリストラ」とはどんなだろう。日立製作所を復権に導いた川村隆相談役は、ITバブル崩壊後の2002年に同社が実施した早期退職を例に挙げる。早期退職の希望者を全部門から募り、予想を大幅に上回る9千人が応募したが、これによる収益改善は長続きしなかった。
低迷する事業を温存したまま、人だけ切っても会社が浮揚するわけがない。「人減らしを考える前に、どの事業を強化し、どれをやめるかの青写真が必要だったが、それがなかった」と川村はいう。
(日本経済新聞 9月29日)
本来のリストラは、現在の人員で事業を再構築して収益力を回復することだが、このタイミングを逃すと、だいたい業績は急降下するものだ。すると事業の再構築よりも、ともかく人員削減に手をつけ、急場を凌ごうとするが、残った社員は(明日は我が身)の思いから士気を下げてしまいかねない。
その1年後や2年後にふたたび人員削減を行なえば、今度は勤務先に疑心暗鬼になってしまい、転職を考え出す。こうして負のスパイラルに入ったら、残された選択肢はM&Aしかあるまい。
健康管理と同じように経営も早期発見・早期治療が鉄則だが、やはり健康管理と同じように、多くの場合、後になって悔やむのが経営の常である。健康法のようにさまざまな経営改革・改善手法が登場しても、病を絶滅することはできない。GMSが斜陽化するなかで例外かと思われてきたイトーヨーカ堂も、大量に閉店するのである。
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