一連の不適切会計問題を受け、歴代社長3人と取締役6人が辞任した東芝(7月21日付)。これは明らかな「引責辞任」であり、残務処理を終えて速やかに会社を去った、と考えるのが常識だろう。たとえ余人をもって代えがたい有能な人物であったとしても、引責辞任とはそういうものだ。ところが、東芝ではそんな常識からはかけ離れた人事が行われている。
取締役代表執行役副社長を辞任した小林清志氏は8月1日付で「半導体顧問」に就任し、今でも副社長の時と同じく、本社ビル31階のメモリ事業部の一角にあるオフィスで執務を続けているのだ。
ただ、この人事は世間的な批判を受けるばかりか、会社全体にも悪影響を与えると考えたようで、顧問に就任したことは社内の中でもごく一部にしか知らされていない。
小林氏の顧問就任について、東芝広報室は次のように説明する。「小林氏の営業資産と技術資産は当社の半導体ビジネスにとって必要。他社からの引き抜き等の可能性も考慮し、会社として判断したもの」。
(東洋経済オンライン 8月25日)
辞任した副社長が顧問に就任した人事に、新たに選出された社外取締役はどんな見解を持っているだろうか。
世間からの非難を覚悟のうえで顧問に就任させたのだから、小林清志氏が抜きん出た手腕家であることは確かだが、社内事情と社会の常識のどちらを優先して判断すべきなのかは明らかだ。
透明性が問われている局面で、今回の人事は、社会の公器としての社会感覚に疑問を持たれかねない。現経営陣が役員人事などで意見を仰ぐような“大物OB”の隠然とした影響力を除去することも、透明性のひとつだ。社外取締役が組織の論理にどこまでメスを入れられるのか、腕が試されてゆく。
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