衆院の安保審議が大詰めを迎えた14日以降、「就職や結婚に響く可能性」などという大学生のデモ参加をめぐるツイートが次々と投稿された。「デモに行くだけで、確実に人生詰みますよ」「就職に不利益が…」。16日にツイッターに投稿されたつぶやきは約3千回もリツイートされた。
「デモに行くなどの政治的表現の自由は、憲法が保障する権利の中でも価値が高いもの」と一橋大大学院の阪口正二郎教授(憲法学)は話す。しかし、誰を採用するかは「企業活動の自由」でもある。
大手化学メーカーで採用を担当する幹部は「デモが就職に不利なんて、いつの時代の話ですか。学生がデモに参加したかなんて調べるヒマもリソースもありませんよ」と一刀両断。「うちの会社には学生運動出身の役員も何人もいますし、私もキャンパスの学長室で座り込みをしていて写真を撮られました。もう30年以上も前かなあ」と笑う。(朝日新聞デジタル 7月30日)
デモ参加を推奨するわけではないが、デモは国民としての意見表明の場であり、企業が警戒するような政治活動ではない。採用面接でも、安保法案の是非を質問して「廃案すべき」と回答する学生を危険分子とみなす企業は、よほど政治信条に凝り固まったところでない限り、まずないだろう。
しかし、興信所にとっては、学生の政治参加を企業が忌避したほうがビジネスになる。かつて大手企業では採用時の個人調査が付きもので、興信所にとっては最大の収益源だった。だが、いまは個人情報保護法の壁で情報を入手しにくくなり、それ以前に、思想調査のニーズがなくなった。
さらに反社会的勢力がビジネス界から排除されたことによって、与信管理調査も財務内容に特化されつつある。興信所にとってはさびしい時代だろうが、裏情報ニーズの減少は、社会としては健全である。
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