1年間の仕事の成果を「期待に合致(meet expectations)」というありきたりの一言で評価することは可能なのだろうか。
企業が社内の階級を取り払ったり、社員が自分の勤務スケジュールを決められるようにしたりするなどの人事管理改革を進める中、勤務成績を評価する制度――5段階評価や「目標達成(on target)」などの分類――はしぶとく生き残っている。
ギャップやアドビシステムズ、マイクロソフトといった企業では、社員同士の連携を妨げたり社員の不安を煽ったりしているとの判断から、成績評価は廃止された。その一方で、なかなか廃止に踏み切れない企業もある。
インテルは長い間、「極めて優秀(outstanding)」から「要改善(improvement required)」までの4段階で約10万5000人の社員を評価・ランク付けしてきた。人事ディレクターのデブラ・ジョンソン氏によると、毎年、社員の7割が下から2番目の評価「目標達成(successful)」を受けており、その多くの社員の士気が低下する傾向にあった。
(ウォールストリート・ジャーナル 4月27日)
社員を勤務評価によって順位づけすれば「2・6・2の原則」で下位2割は好ましからざる社員と色づけられ、毎年、その2割は減少しない。メンツが変わっても、2割という塊は不変だ。いわば、あえて好ましからざる社員を生み出すのが順位づけである。
順位づけの極みは年間表彰制度である。昔からモチベーション高揚策として、年次の社員総会などで業務成績上位者を表彰し、ご褒美に海外旅行などを提供する催事が多くのベンチャー企業で実施されているが、この催事はいたずらに社員の我欲を喚起しかねない。(自分さえよれば)(自分の部署さえよければ)というWIN―LOSE型社員をつくり出しかねないのだ。
それは社内の人心を荒廃させ、組織風土の劣化を引き起こし、そこで育った社員はすべからく打算を是とするから、ビジネススキルがすぐれていても人望に欠けてしまう。人間の資質の問題といえばそれまでだが、そもそも会社に徳育を施すだけの器量がないのだ。
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