日本人の長時間労働が減らない。2014年のデータを見ると残業時間は年173時間で前年より7時間、20年前より36時間増え、統計をさかのぼれる1993年以来、最長になった。政府や企業が労働時間の短縮を目標に掲げながら、なぜ改善しないのだろうか。
厚生労働省の毎月勤労統計調査で、フルタイムで働く正社員の残業を調べた。週あたりにすると約3時間だ。多くの産業で延びており、特に貨物運送業(年463時間)、自動車製造業(年275時間)、情報サービス(年248時間)で目立つ。統計で見えない「サービス産業」を含めると、実態はもっと増えそうだ。(日本経済新聞 3月23日)
長時間労働を是正する取り組みは昔から試みられているが、企業文化が変革されない限り、一向に是正されまい。“働き蜂”とか“仕事中毒”などと揶揄された時代と企業文化は何ら変わっていないのだ。
いまもなお労働時間は組織への忠誠心の有力なモノサシである。連日のように終電近くまで働く社員は、成果が乏しくとも忠誠心は高く、望ましい社員像のモデル――この見方は根強く、時間外手当の無駄遣いというマイナス評価を補って余りある。
しかも中小ベンチャー企業には「労働基準法を遵守していては経営が成り立たない」とか「労基法を超えて長時間以上働いてこそ一人前に成長する」などと信じて疑わない経営者がけっして珍しくない。
長時間労働を是呈するには、組織からの精神的な自立が必須だが、あまり現実的とは言えない。この問題は健康管理を担保したうえで、日本人の本性として放置する以外にないのかもしれない。
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