自動車や電機大手で昨年を大きく上回るベースアップ(ベア)が見込まれる平成27年春闘。政府が目指す「経済の好循環」実現に向けて、雇用の7割の受け皿とされる中小・零細企業の賃上げの動きにも注目が集まっている。トヨタ自動車の下請け企業が多く集まる愛知県西三河地区の現場を訪ねると、余裕がなくても賃上げに踏み切らざるを得ない中小・零細企業の苦渋が浮かび上がってきた。 「もうかったから給料を出すのではなく、将来に期待して出すことにした」 トヨタ系列でエンジン部品などを製造する西尾市の2次下請け企業。男性経営者(48)は2年連続で賃上げに踏み切る理由をこう説明した。 従業員は約50人。売上高はリーマン・ショック前の85%程度で、原材料価格の高騰も利益を圧迫している。それでも、月1%程度の賃上げを決断した。 背中を押したのは、「人材確保の難しさ」だ。大手の業績回復に伴って仕事量が増え、2年ほど前から6人を採用したが、働き手の奪い合いは激しくなる一方。採用した半数が別の企業に移ってしまうという。(産経新聞 3月14日)
トヨタは好業績の恩恵を中小の取引先にも波及させようと、下請けメーカーに年2回行ってきた値下げ要求を26年度下期と27年度上期の2期連続で見送った。賃上げなどの原資に充ててもらう狙いがある。
仕入先に対してコストダウン要求が繰り返されるのは商取引の原則だが、自動車メーカーの賃上げを見る限り、コストアップ容認という経営の原理原則から外れた措置が団交されないものか。長年の苦労に報いて、下請けメーカーの人件費アップの財源を提供してあげるのである。
いわば利益相反から利益共同へと転換を図るのだが、「儲かっているのなら値下げせよ」というのが発注側の本性だ。利益共同は夢想にすぎないだろう。
Talk Geniusとは-
ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。