米国コンサルティング会社、タワーズワトソンがまとめているCEO報酬の国際比較が興味深い。最新の集計によると、売上高1兆円以上の米企業のCEOは平均して総額11億5000万円の報酬を受け取った。日本企業は1億3000万円にとどまり、総額だけを比較すれば米CEOの報酬は突出している。
しかし、この中から業績や株価の動向に影響される「基本報酬」を抜き出すと様相が異なる。米CEOの基本報酬は総額の11%にあたる1億2000万円にとどまり、対照的に日本企業は総額59%、7400万円となり日米の差は急速に縮まる。
日本の経営者は業績や株価がふるわなくても報酬が減る恐れが、米国よりも小さい。裏を返せば業績を拡大しようというインセンティブが不足しがち――。タワーズワトソンの櫛笥隆亮ディレクターは指摘する。(日本経済新聞 2月8日)
日米のCEO報酬の金額と基本報酬の比率には2つの側面がある。ひとつは、一般社員との報酬格差を是とするか非とするか、いわば社会での優勝劣敗をどこまで容認するか。もうひとつは、基本報酬の比率に企業価値とは何かが反映されていることだ。
米国で企業価値はおもに時価総額であり、社員の定着状況など雇用の優先順位は高くないが、日本では雇用が重視される。時価総額の極大化に偏重する一方で、社員のリストラを続けるような企業はけっして評価されない。たとえ株主が評価しても、社会が評価しない。
日米企業のどちらのあり方が健全かを議論すれば、イデオロギー論争にはまって結論が出ない。日本企業のCEOには金の亡者でなく、同志の心をもって社員の幸福に思いを致す人物が少なくない。人本主義経営が提唱された所以であり、国際評価を懸念するあまり、CEOが金の亡者に転向する必要などまったくない。
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