ドンキホーテホールディングス(HD)は5日、創業者である安田隆夫会長が6月30日付けで代表取締役を退任すると発表した。安田氏から「気力、体力ともに十分なうちに自らの意思で退くことが、会社の長期的な繁栄の絶対条件だ」との退任申し出があり、これを受諾した。
安田氏は昭和55年にジャスト(現・ドンキホーテHD)を設立。平成元年3月には総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」1号店を東京都府中市に開店し、店舗網を拡充するほか、M&A(企業の合併・買収)を進め、平成12年に東証1部上場を果たした。平成26年6月期には売上高が6千億円を超すなど、一代で大型小売りグループを創り上げた。
安田氏は6月末に代表取締役を退き、創業会長兼最高顧問に就任する予定。(産経新聞 2月5日)
2年前に安田隆夫氏にインタビューしたときに、安田氏は権限委譲の難しさについて経験を交えて話してくれた。権限を手放すことは、ある意味で自己否定をともなう行為であり、相当な葛藤が生ずるのだという。
だから委譲が必要であると理解していても、心がそれを容易に認めず、多くの経営者がいつまでも権限を持ちつづけてしまうのだ。経営者が老いてもなお権限を持ちつづければ、老害という自然現象に直面する。
高齢の経営者は世間では元気な高齢者ともてはやされ、増税と医療費削減に貢献すると賞賛される気運だ。たしかにマクロ経済への貢献はそのとおりだし、当人にとっても、いつまでも張り合いを持てて晩年の幸福を満喫できるに違いない。
だが、経営者が高齢化してもなお現職にとどまりつづけることには、マイナス面もあるのだ。
老害を受けざるをえない部下たちの胸中はどうか。あるいは、いつまでも権限を与えられず、経験を蓄積する機会に恵まれない部下たちのキャリア形成はどうか。
安田氏が申し出た「気力、体力ともに十分なうちに自らの意思で退くことが、会社の長期的な繁栄の絶対条件だ」という退任理由に、大物経営者の見識がうかがえる。
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