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人材会社がリストラを請け負う時代へ

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上司など会社側は退職勧奨につながる言葉を一切口にしない。代わりに人材会社が間に入ります」。どういうことか。
「まず会社は『スキルアップのため』といった業務命令で、社員を人材会社に行かせます。立場は出向や業務支援などさまざまですが、そこで事実上の退職勧奨が行われます」
人材会社では「キャリア志向性」や「人生の根っこ探し」などと称した適性診断テストを受けさせられる。テストでは一問一答式の質問にYES、NOで答えるが、最終的な結論は「会社の外に活躍の場を求めたほうがいい」と決まっている。
時には「厳しい環境の中では、いろんな能力開発をしなければならない。あなたは選ばれた人です」とホメ殺しのトークを駆使し、たとえば本人がSEなら「現在の業務に加えて営業力も身につけましょう」と言い、営業職なら「ロジスティクスを知っておく必要もある」とおだて上げる。(経済ジャーナリスト・高井尚之氏 プレジデント 1月26日)

人員削減を実施する場合、風評被害を考慮せざるをえなくなった。摩擦を回避したい会社側は人材会社を間に入れて、自主退職へと対象者を誘導する方策に入ったのだ。この記事には「おだて上げる」とあるが、そのほうが背中を押しやすい。

かつては、そうではなかった。25年ぐらい前になるが、アウトプレースメント会社が創設された頃、所属するコンサルタントはこう教えてくれたものだ。

「企業から依頼される社員に、仕事のポリシーやキャリアプラン、休日の過ごし方などさまざまな項目を自己診断シートに記入してもらいますが、どんな記入内容であっても『こんなことではダメ』と、本人の前でシートに大きくバツ印を付けます。中立的なコンサルタントから見て、本人にダメ社員であることを宣告するのが目的です」。

あえて自信を喪失させ、辞表提出へと強引に導いたのである。いくらビジネスとはいえ、そんなコンサルティングをやっていたら、どこかで罰が当たるのではないかと思ったが、ヨイショ型の退職誘導としていまでも行なわれている。

こんな姑息な手段をとらずに、会社側が腹を割って実直に話し合えばよい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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