若いころにがむしゃらに働いたサラリーマンが40歳前後で先が見え始め、組織で働くことの意味に悩み始める。現役サラリーマンで評論家の楠木新さん(60)は、そんな状態を「こころの定年」と名づけ、会社人間だけではない、もう一つの自分を持つことを勧めている。
10月中旬。大阪市中央区のビジネス街にあるビルの一室で、楠木さん主催の「こころの定年研究会」が開かれた。仕事帰りの男女ら約10人が参加した。
「こころの定年」とは、サラリーマン人生の前半戦と後半戦の境目にあたる40歳前後で、働く意味を見失っているような状態を指す。研究会はこれを理解し、克服する方法を考えようとスタートし、今回で52回目。座学もあればグループワークもあり、何度も参加する人も多い。
この参加者は、3グループに分かれ「5年後、10年後のイキイキした自分の姿」を書き出した。
「副業を成功させる」「子供たちを教える場を作る」「趣味のブログを多くの読者に読んでもらう」。参加者はそれぞれ、仕事の時とは違う、もう一つの自分の姿を語った。さらに「自分が何をすべきか、分かっておく」「年齢を否定せず動き出すべきだ」など、もう一つの自分になるための方策も次々と挙がった。(毎日新聞 11月3日)
40歳前後がサラリーマンの曲がり角になることは、今に始まった問題ではない。まだ年功序列型人事が継続していた1980年代、男性の40代が第二の思春期と呼ばれた時期もあり、この世代はライフプランセミナー会社の草刈り場となったものだ。
40歳前後のマインドリセットは昔から悩ましい問題で、「こころの定年」の背景には、終身雇用の崩壊でなく、むしろ年齢的な区切りという側面が強いのではないか。
サラリーマン生活の後半戦のシナリオは多様だ。上昇志向の単線型人生から、もっと幅を設けるスタイルへ切り替える年齢にあって、次にどうするかは当人が決める以外にない。
しかし、それが容易でないサラリーマンが多いからセミナービジネスが成り立つのである。
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