泡盛「残波(ざんぱ)」を全国的にヒットさせた酒造会社「比嘉酒造」(沖縄県読谷村)が、沖縄国税事務所から4年間で6億円の申告漏れを指摘されたことが分かった。役員4人に支給した報酬計19億4千万円のうち6億円が「不相当に高額」と判断され、経費として認められなかった。同社は過少申告加算税を含む1億3千万円を追徴課税されたが、処分を不服として東京地裁で争っている。
同社の代理人を務める山下清兵衛弁護士は「実際に働いた対価としての報酬なので全額認めるべきだ。国税庁が民間企業の給与に口をはさむべきではない」と話している。
関係者や裁判記録によると、同社は2010年2月期までの4年間に、創業者の社長を含む親族の役員4人に計12億7千万円の基本報酬と、退職慰労金6億7千万円を支払った。同社はこれら全額を経費として法人所得から差し引き、税務申告した。
(中略)
沖縄国税事務所は沖縄県と熊本国税局管内(熊本、大分、宮崎、鹿児島)で、売り上げが同社の0.5~2倍の酒造会社約30社を抽出し、役員の基本報酬を比較した。その結果、同社は平均額の4~9倍で、退職慰労金も高額だと認定。06年2月期をピークに売り上げが減り、社員給与は増えていないのに役員報酬は上昇したなどと指摘した。(朝日デジタル 11月2日)
比嘉酒造の代理人である弁護士が主張するように、原則として国が民間企業の給与に介入すべきではないが、この事案の場合、役員報酬の受給者4人が親族で、さらに社員給与が増えていないのに、役員報酬が増額されたことが引っかかる。
社員給与も同様に、大幅に引き上げれば余計な疑念をはさまれずにすむのだが、役員報酬だけを増額するにふさわしい合理性があるのかもしれない。
同族経営にもさまざまな実態があるので、ひとくくりにはできないが、創業家にとって社員は“使用人”にすぎないという例も少なくない。
表立って(企業は人なり)と標榜していたところで、ホンネは(企業は創業家なり)と認識している場合もあるのだ。けっして同族経営を否定しているのではない。創業家が不動の立場を固めているほうが、社内政治を発生させず、企業統治に好ましい一面もある。
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