Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

不当解雇、年収1~2年分の金銭補償で解決を――政府が検討着手

0909-2

政府は裁判で認められた不当な解雇を金銭補償で解決する制度の検討に入る。 解雇された労働者が職場に戻る代わりに年収の1~2年分の補償金を受け取れる枠組みを軸に検討を進める。 労働者が泣き寝入りを迫られる現状を改めつつ、主要国と金銭解決のルールで足並みをそろえる狙いだ。 2016年春の導入をめざすが、中小企業や労働組合の反発は強い。実現には曲折がありそうだ。
(中略)
厚労省に寄せられる解雇トラブルの相談は年5万件。 うち裁判にまで進むのは1000件程度で、裁判で判決を受けるのは300件程度だ。 今の制度では裁判官が解雇を無効だと認めても、判決では職場復帰しか命じることができない。 労働者がもらえたはずの賃金を受け取るには、判決後にあらためて和解や賠償請求の手続きがいる。
新制度では、労働者側の希望に応じて裁判官が判決時に不当解雇の補償金を払うよう企業に命じられるようにする。 年収の1~2年分を補償金としている海外の相場を軸に制度の枠組み作りが進む見通しだ。(日本経済新聞 8月24日)

そもそも議論の焦点が違うのではないか。不当解雇を防止するには、業績に黄色信号が灯るぐらいの厳しい罰則を下さない限り、企業が認識を改めるはずはない。

年収1~2年分を支払えば解雇できるとなれば、退職金制度を改訂して大幅に減額し、それを不当解雇補償金の原資に充て、正当性を装う解雇が増えるはずだ。解雇の正当性を主張する理論武装も巧妙に進み、労働者の泣き寝入りは一層深刻になってゆく。

金さえ払えば何でもあり、という荒廃した風土が産業界を侵食することは、政府にとっては看過してもよいのだろうが、労働者にとってはたまったものではない。

着地点を金銭解決に見出すのなら、補償金を年収の5~10年分に設定すればよい。そうすれば企業も姿勢を正すのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。