精密小型モーター世界最大手の日本電産が、シャープの片山幹雄元社長(56)を副会長に招く人事を固めたことが5日分かった。最高技術責任者(CTO)を兼任するとみられる。創業以来40年超トップを務めてきた永守重信社長(69)は、外部からの人材起用に積極的で、「ポスト永守」への布石を打っているとの見方もある。
5日の取締役会で新しい人事体制を決定する見通し。片山氏はシャープの技術顧問「フェロー」を退任する。日本電産は自動車関連に加え、ロボット分野などにも進出する意欲を示しており、片山氏は次世代の技術開発を担うことになる。
片山氏はシャープの技術者として液晶を事業の大黒柱に育てた実績を評価され、49歳で社長に就任。堺市の液晶工場に巨額投資を行ったが、円高や価格競争の影響で業績が悪化。会長を経て、技術顧問に退いた。
日本電産は2013年には、日産自動車の役員に就任予定だった呉文精(くれ・ぶんせい)氏をスカウトし、副社長に起用している。
永守社長は世襲には否定的で、2人の息子はすでに別の企業のトップに就任している。企業買収で会社を成長させてきた永守氏は、自身の後継者も外部の優秀な人材を生かす方針のようだ。(夕刊フジ 8月5日)
注目の人事だ。片山氏の去就ではなく、大物創業オーナー社長が後継者にどれだけ実質的に権限を委譲できるか。
創業者と同じ水準の経営力を後継者に求めるのは、どだい無理である。かりに、いわゆるプロ経営者を招聘したところで、プロゆえの強烈な自我が創業者と衝突して、早晩、袂を分かつことになるだろう。永守氏もこれを本能的に嗅ぎとっているのかもしれない。
創業者にとって指名した後継者への権限移譲は、自分の存在を否定するかのような苦行なのだ。後継者は何よりも自分に衝突しないタイプでなければならないし、当然だが、リーダーシップも有していなければならない。
だから、創業者はあまり年を取って頑固にならないうちに世代交代に踏み切ったほうがよいのだが、これが難しい。煩悩との闘いであるからだ。しかも生涯現役という高齢化社会のキーワードが、世代交代を先延ばしにする大義名分を与え、なおさら難易度が高くなった。
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