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ワタミが“脱ブラック”に向けて理念集を改定

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ワタミが深刻な業績低迷に苦しんでいる。居酒屋チェーンを中心とする主力の外食事業の売上高がピーク時の8割まで落ち込み、平成26年3月期の連結決算は上場以来初の最終赤字に沈んだ。今期は安価な大衆店から高収益の専門店業態への転換に本腰を入れる計画だが、一方で、サービス業の「要」である人材の確保難が行く手に影を落とす。業績を回復軌道に乗せるためには、デフレ環境下で成功した事業モデルから脱却するだけでなく、従業員の労働環境や「ブラック」の評価が根付いた企業イメージの改善も急務だ。
「365日24時間死ぬまで働け」という表現を改めた-。ワタミは今月19日、ホームページ上にこうした「お知らせ」を掲載し、社員6000人余りに配布している「グループ理念集」の改訂を明らかにした。理念集は創業者・渡辺美樹氏のメッセージをまとめた内部文書で、その激しい文言が、社員に過酷な労働を強いるブラック企業の証左だとみられてきた。
同社は「言葉が一人歩きし、誤解された」(広報)と釈明しつつも、批判が高まる発端となった6年前の過労自殺事件にふれ「ご遺族の心情を察し、表現は慎重であるべきだった」と、改訂理由を説明する。(産経新聞 5月31日)

ワタミが上場以来初の最終赤字を計上した背景として、会社側は居酒屋チェーン業態の画一性が消費者の支持を失いつつあることを挙げている。たしかにそのとおりだろうが、それ以上に(ブラック企業に金を払いたくない)という消費者心理がはたらいているのではないか。

そもそも(酷使されているんだろうな)と思われる店員を前に、楽しく酒を酌み交わせるものではない。
同じく企業イメージがブラックなユニクロの場合、商品力が圧倒的に優位で、その牙城は揺るぎない。だから好調を維持できるのだが、そのユニクロも非正規社員の正社員化など就労環境の改革に着手した。

ワタミが本腰を入れて企業イメージの改善をしたいのなら、就労環境の問題点と改善策を社外に向けて公表することが必須だ。店員を確保できず、消費者からも見放されてしまった原因は何か。それをわかっていても、認めたくないのが企業の本性だが、社会と折り合いをつけられるかどうかは、ひとえに理性の問題としか言いようがない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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