日銀の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、3月の雇用人員判断指数は大企業のマイナス6に対し中小はマイナス15.中小の方が不足感が強く、人材確保のために賃上げする企業も多い。
上げられる企業はまだいい。「ない袖は振れない」という中小も多い。「(電機大手は好業績に転換したが)国内の下請けへの波及はまだまだ。人件費は到底上げられない」。都内に本社を置く樹脂成型部品メーカーの社長の表情は厳しい。
(中略)
足元の中小の賃上げについて、東京商工リサーチ(東京・千代田)の友田信男取締役情報本部長は「人員確保のための先行投資の側面も強い」と指摘。そのうえで「収益力が伴わなければむしろ資金繰りが悪化する恐れもある」とみる。
実際、足元では人手不足や人件費上昇による倒産が増えているという。人件費上昇による資金繰り悪化が引き金で倒産した件数は今年1~4月期で8件と、昨年1年間の9件にほぼ並んだ。(日本経済新聞 5月22日)
1990年代の半ば、バブル経済崩壊してしばらく経った頃のことだ。社員100人の工作機械メーカー社長が「給料を下げても社員が辞めない秘訣ってものがあるんだな」とつぶやいた。このメーカーも賃下げをせざるをえなかったという。
「オレを信じて、ついてきてくれている社員の給料を下げるのは、そりゃ断腸の思いだけどね。でも。辞めてもらうよりはいいだろ?」。私は「自分から辞めた社員はいなかったのですか?」と尋ねた。
「1人もいない。それは、俺と社員との関係が親分子分の関係だからだよ。金じゃなくて心でつながっているから、社員も会社の台所事情を察してくれて。それで、がんばってくれてるんだよな」
賃上げの時代でも、やはり基本は雇用の確保にある。
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