Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

赤福“企業か、家業か”で親子ゲンカ

0527

dosen01dosen02

伊勢神宮参道に本店を構える和菓子メーカー赤福(三重県伊勢市)でお家騒動騒が勃発した。4月に社長の浜田典保(のりやす)氏が事実上の解任となり、新社長には実母の勝子(まさるこ)氏が就任。典保氏は平成19年に消費期限の偽装が発覚し経営危機に陥った赤福を立て直したが、名物みやげ「赤福餅」を全国に知らしめた先代社長で実父の益嗣(ますたね)氏ら両親と経営方針をめぐり確執があったといわれる。消費者不在の親子ゲンカが宝永4(1707)年創業の老舗の「のれん」を傷つける結果を招いている。
「従業員の皆様へ」。4月23日、新社長に就任した勝子氏は、こう題した文書を社内で配布した。その中では、今後の赤福について「未来に向けた経営を志向するため、『のれん』に象徴される理念に基づく経営を目指す」と強調した。
歯車が狂い始めたのは、19年に発覚した消費期限の偽装問題だ。
赤福で消費期限の偽装や商品の再利用などが常態化していたことが発覚。食品衛生法違反で3カ月の営業禁止処分を受けた。当時会長だった益嗣氏は引責辞任し、17年から社長を務めていた典保氏は経営再建のため続投することになった。(産経新聞 5月20日)

赤福のお家騒動は顧客への消費者が揺らいだという問題の以前に、たぶん社員が迷惑をこうむっているのではないか。赤福の実情は知らないが、一般論として創業家にお家騒動が勃発すれば、社員は当人の自覚に関わりなく「○○派」などと色分けされ、社内政治に翻弄されてしまうものだ。

社内政治はおおむね血縁者間のパワーゲームで、それら血縁者には会社に在籍しない者も少なくない。しかし、人事への影響力は強大である。なんとも厄介な存在だ。
14年にわたって中高年エグゼクティブの転職を手がけているアクティベイト社長の海老一宏氏は、著書「40歳からのサバイバル転職成功術」(ワニブックス)で、その実態を赤裸々に紹介している。

中小企業には社長の兄弟、夫人、息子などの「非公式な集団」が存在し、「社長に対してあることもないことも言います。嘘だって平気でつきます」と。そして社員は「彼らにNGを出されたら、社長がいくら期待しても無理です」。
「非公式な集団」にとって、第三者は、たとえ副社長であろうとも使用人にすぎない。理不尽と言えば理不尽極まりない職場環境だが、社員の立場ではどうにもならないのだから、家業型中小企業に勤務するには、正論を脇に置いて(社会の縮図に身を置いているのだ)と現実を容認する以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。