Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

定時に帰る社員を会社は「マイナス評価していない」

0519_1

社員は残業が評価につながると考えているのに、会社は人事評価で考慮していない――内閣府が13日に発表した「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」で、個人と企業の認識のギャップが浮き彫りになった。
調査は昨年9~10月に、企業1016社と、全国の男女3154人を対象に行われた。調査結果によると、残業が上司からどう思われていると思うかを正社員に複数回答で聞いたところ、1日12時間以上働いている人のうち、最も多い53%が「がんばっている(と思っている)」と回答、12時間未満、10時間未満の正社員でも、「がんばっている」がもっとも多かった。
これに対し、「社員が残業や休日出勤をほとんどせず、時間内に仕事を終えて帰宅している」場合に、「マイナスの人事評価をしている」企業は6%で、「考慮されていない」が74%に上った。(読売新聞 5月3日)

残業代を生活補填費と考えて無駄に働く時代はとうに過ぎ去ったが、長時間労働を忠誠心のモノサシとして見なす社風は、オーナー企業ではいまもなお多い。まして成績の芳しくない総合職社員にとって、定時に退社するのは気が引けてたまらず、何をやるかではなく、何時まで会社に時間を捧げるかに心血を注いでしまうのだ。

会社にとってはコストパフォーマンスがますます悪化してしまうのだが、本人の胸中はそれどころではない。何とも無意味な齟齬である。会社側が、時間外労働はコストアップ要因に見なすと宣言すればすむことだ。
だが、ベンチャー企業のなかには長時間労働を精神文化とする例も少なくなく、あるITベンチャーでは午後7時に帰宅しようとした社員が、マネージャーから「もう帰っちゃうのか?」と咎められたそうだ。この会社の出社時間は9時である。

今春の賃上げラッシュを見る限り、安倍晋三政権のメッセージ力は甚大だった。残業と休日出勤の是正に向けても、しつこくメッセージを発してほしいものだが、労働時間の規制緩和構想と矛盾しかねず、これは期待できそうにない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。