6月の株主総会は、上場企業の社外取締役導入や増配などの株主還元策に注目が集まりそうだ。株主名簿の管理など「証券代行業務」を手掛ける三菱UFJ信託銀行は、社外取締役導入企業の割合が、東証上場企業の55%程度から6月の総会後には「7割程度まで上昇する」と予想する。
社外取締役導入企業の急増が見込まれる背景には、今国会で成立見通しの会社法改正案では、社外取締役を置かない上場企業は株主総会でその理由を説明することが必要になることがある。3月期決算企業にとって、6月の総会で導入を見送れば、企業統治(コーポレートガバナンス)に対する姿勢を株主から厳しく問われかねないからだ。
景気の回復傾向を受け、株主には増配への期待も強い。三井住友信託銀行が証券代行業務を受託した企業対象のアンケート調査によると、3月の総会では、配当政策や株主還元に関する質問が前年より増える傾向にあったという。
三井住友信託銀は「リーマン・ショック後に株主は我慢を強いられていた面がある。業績の回復により株主還元への期待が高まっている」とみている。(時事通信 5月4日)
社外取締役を真に機能させるには、人選とタスクを明確にすることが要件である。株主総会で新任の取締役選定を諮る場合、多くの企業で選定の理由が明確に説明されず、とくに社外取締役にいたっては「豊富な経験と高い見識を有する」など内容空疎な表現に傾いている。
どんな実績を積み、どんなノウハウを保有し、それらが当社に貢献されると期待できる根拠は何か。担当するタスクは何か。せめてこのぐらいは明確に説明されないと、お友達人事のそしりを免れえない。当然、再任する場合には、業務実績をもって任期中に果たした役割が報告されなければならない。
会社法改正による社外取締役の導入ラッシュは、天下りには格好の受け皿拡大となり、霞ヶ関利権の版図を拡大しかねない。株主対策とは別の構図が潜んでいるのだ。
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