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「家族を養えない」介護業界で低賃金を理由に男性が寿退職

介護業界、賃金、寿退社

正規職で介護福祉士の資格を持つ宮崎さんの月給は、手取りで約18万円。15万円を切るという同業の友人よりは「恵まれている」と感じる。とはいえ、介護労働者の賃金は他業種に比べて低い。全国労働組合総連合のアンケート調査(昨年10月)では、手当を除く正規職の平均賃金は20万7795円。厚生労働省調査の全産業平均(29万5700円)を約9万円下回る。
長らく介護は主婦による家事労働とみなされてきた。職業としての確立が遅れ、低賃金から抜け出せない。介護労働安定センターによると、介護職の離職率は17.0%(2011~12年)で、全産業平均(14.8%)を上回る。求職者1人に働き口がいくつあるかを示す2月の有効求人倍率は2.19倍。全産業平均(1.05倍)の2倍だ。
「家族を養えないからな」。首都圏の介護施設に勤める30代の男性介護福祉士は、結婚を機にそう言って「寿退社」していく仲間を大勢見送ってきた。この道7年目。専門学校の同期80人のうち、続けているのは十数人。自身の手取りは初任給から2万円ほど上がり、ようやく月約23万円となった。が、同業の妻は初めて産んだ子の育休中。共働きでなければ生活は成り立たず、保育所を確保できるかが不安でならない。(毎日新聞 4月27日)

厚生労働省の担当官によると「介護職の離職率は30%超の事業所と5%以内の事業所に二極分化しています」。昨年来、5%以内にとどまっている社会福祉法人をいくつか訪問したところ、職員が定着している要因は給与水準だけではなかった。他産業に等しい給与水準が保たれていることは最低限の条件で、ワークライフバランスの確立や研修制度の拡充もまた他産業並みの水準だった。

 

離職率の低い介護事業所とは、要は、従業員が人生を賭けて働くに足る職場環境が整備されている事業所である。多くの事業所にこれが欠けているから、若者も就職したがらないのだ。

 

今年2月のことである。社会福祉が専門の大学教授が介護事業者対象のセミナーで「出席者の皆さんは自分の子供を介護業界に就職させたいと思いますか?思わないでしょう」と問いかけたところ、場内が凍りついた。図星だったのだ。この教授は、大手流通企業と社会福祉法人の双方から内定を得たゼミ生に「どちらに就職したほうがよいでしょうか」と相談された折に、大手流通企業を勧めたという。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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