米ゼネラル・エレクトリック(GE)の取締役会が厳粛な秘密会議を開き、同社の最高経営責任者(CEO)にとって20年の任期が適切かどうかを議論しているという。そんな議題を持ち出すのはどれほど自負心の強い人物かと思うのが当然だろう。 ジャック・ウェルチ氏のことだ。株式市場に好感され、フォーチュン誌の表紙を飾ったGEの前CEOで、2001年に業績低迷を受けてあっさり退任するまで在任期間は20年に及んだ。後任に就いた同社生え抜きのジェフ・イメルト氏は、13年にわたって社業の立て直しとグローバル化に取り組み、最近では後任人事がささやかれ始めている。 (中略)CEOの座に長居しすぎる危険は明確で、これまでもすでに実例がある。かつて有効だったがすでに時代遅れの戦略を継続してしまうこと。自らが社内で引き立てた少数のイエスマンに相談すること。顧客や取引業者との交流が減ってしまうことなどだ。(中略) 就任の際に5年未満の期間を想定していると、長期的な視点で成長軌道を描こうとするよりも、目立つ成果を上げたいとの誘惑にかられる。株価上昇によってストックオプション(株式購入権)の価値を高め、称賛を浴びているうちに身を引くのは、会社のためではなく自分のための戦略だ。 コンサルティング会社のストラテジーアンド(旧ブーズアンドカンパニー)の年次調査によると、世界の上位2500企業のCEOの平均在任期間は約6年半だという。買収者の意向による短期間のトップ交代が一定数あるため、中央値をとると4.8年になる。(英ファイナンシャル・タイムス特約=日本経済新聞 4月17日)
トップの適切な在任期間は昔から議論され続けたテーマだが、日本企業の場合、余人をもって代えがたい人物であればあるほど、在任期間は本人が健康を害するまでと相場が決まっている。 権限委譲や世代交代の必要性などの一般論は、社長なら誰だって認識し尽くしている。 社長に就任したら、次期社長の育成が重要な任務に課せられることも認識しているはずだ。 しかし、大物社長には、これができない。 とくに創業社長の場合、「オレが、オレが」と人一倍の我の強さで会社を率いてきただけに、退任は人生からの引退のような気分となって、余程の必然性がない限り受け入れられる人事ではない。 後継者が自分以上の成果を出すことも、内心ではおもしろくないから、なおさら厄介な問題となる。 大物創業者にとって、後任へのバトンタッチはもはやビジネスの論理でなく、人間の業との闘いなのである。 メインバンクやコンサルタントがどう進言しようと、業の領域までは立ち入れない。 進言するのは、むしろ宗教家や心理学者の役目かもしれない。
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