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人手不足対策に外国人労働者の雇用拡大論が浮上

gaikokujin

深刻な人手不足対策の切り札として、外国人労働者の受け入れを拡大してはどうか。
政府内でこんな議論がじわりと浮上してきた。景気回復に伴う労働需給の逼迫が、外国人受け入れを絞ってきた国の政策の土台を揺るがす構図だ。
人口減少という重たい構造問題もからむだけに、議論は複雑な展開をたどりそうだ。
「この間も受注を断ってきたばかり」。2月上旬、東京都杉並区の左官工事業者の幹部はこうぼやいた。「リフォームや耐震工事が急増しているのに人が足りない」

政府統計によると、建設関連の現場では求職者1人を数社が奪い合う状況。
女性や高齢者の活用に限界がある職場で、人手確保が成長のボトルネックになりつつある。
全国各地の人手不足の悲鳴に応える形で、政府が議論を始めたのが、発展途上国の外国人を最長3年間受け入れる「技能実習制度」の拡充だ。
(日本経済新聞 3月2日)

国内だけで労働力の供給が追いつかなければ、外国人の雇用に手を広げるのは理屈ではある。
ところが、これは単純な問題ではない。外国人労働者の受け入れは、実習制度など就労環境の整備だけで展望の開ける問題ではない。
受け入れ先体制が整っても、日本側の望みどおりに確保できるかどうか。

厚生労働省OBに尋ねたら、深刻な表情で「日本の事情だけで取り組める問題ではありません」と返された。
こんな事情があるのだという。
アジアではこれから高齢化の始まる国がいくつかあり、しかも多くの国で出生率が下がっているため、生産年齢人口が減っていく。
やがて自国の労働力確保を優先せざるをえなくなり、日本に送り出せる状況ではなくなるだろう。
かりに各業界で飛躍的に生産性を高める手法が登場しても、絶対的に人手を伴う業務は存在するだけに、解の見えない問題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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