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兵庫県の職員採用試験、筆記辞退者4割…知事パワハラ疑惑が影響の可能性

兵庫県の今年度の職員採用試験で、一般事務職(大卒程度)の筆記試験の辞退者が4割に上ったことがわかった。過去5年と比べて高い水準で、斎藤元彦知事がパワハラなどの疑惑で内部告発された問題が影響した可能性がある。
県関係者によると、今年度は4月22日~5月17日に申し込みを受け付け、60人の採用枠に639人が応募した。筆記試験は6月16日に行われ、377人が受験。辞退者は262人で、辞退率は41%に上った。19~23年度に比べて5~10ポイント程度高かった。
 筆記試験があった6月16日は、県議会が百条委員会の設置議案を可決し、問題の真相究明に乗り出した3日後で、知事への批判が高まりつつあった時期と重なる。
 辞退率の高さについて、県幹部は「『県庁で仕事をしたい』という学生が減ったということ。これ以上、県政の混乱が続けば、人材確保に大きな影響が生じかねない」と話した。
(読売新聞オンライン 8月3日)

 地方公務員の志願者数が減少傾向を辿っているなかで、兵庫県の知事パワハラ問題は知事個人の問題にとどまらず、一部の幹部職員による水面下での暗躍や、百条委員会に出席にする職員への無言の圧力が次々に報じられている。その一方で、幹部職員や県会議員が知事の暴挙から中堅・若手職員を守るという行動は報じられていない。
 事の真相は現時点では不明だが、かりに知事が代わっても、組織に見え隠れする隠ぺい体質は、いかんせん体質だけに容易に改まらない。職員採用試験の応募者が不安を覚えて辞退するのは当然の成り行きである。
 地方公務員は身分と処遇の安定が魅力だが、昨今は首長や議員による職員へのパワハラとセクハラが次々に発覚するようになった。自治体によっては、職員が首長と議員に下僕のように仕えることを強いられている実態も明らかになってきた。もちろん、いまにはじまったことではない。SNS時代に移行して理不尽な関係が表面化しているのだ。
 首長と議員は選挙を経て選ばれた住民の代表であり、住民の負託を受けた立場ゆえに職員とは主従関係にあるという「了解」が、ハラスメントの土壌を生んでいる。なぜ、こんな首長や議員に唯々諾々と仕えなければならないのか――そう疑問を抱いても、行政機関の一員になれば服従せざるを得ない。
 この現実が見えると、はたして公務員を選んでよいのかどうか。考え直す志願者が増えるのは当然だろう。首長、議員、職員の関係のあり方が問われている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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