Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

若手が辞めてしまう 「やりがい搾取」にならない介護職場は

長年の課題だった介護職の離職率は改善していますが、若手の離職は雇う側にとっても雇われる側にとっても痛手です。社会福祉法人光朔会オリンピア常務理事の山口宰さんに聞きました。
 ――介護の仕事は離職率が高いと言われてきました。  
◆介護労働安定センターが実施している介護労働実態調査では、2023年度の介護職員の離職率は13.1%までさがり、全産業平均(雇用動向調査、23年)の15.4%より低くなっています。  
どこの施設でも事業所でも、人手不足が課題になっていて、離職を防ごうと取り組んできた結果です。ただ、若手の離職は依然として大きな問題として残っています。  一時、介護職が敬遠されたのは、虐待などの事件ばかりが注目され、きつい仕事のイメージがあったからです。給料も確かに以前は安かったのですが、処遇改善が進み、他業種からの転職も増えています。  
ただ、仕事についてすぐに辞めてしまえば、給料はあがりません。介護業界でも「出世したくない」と考える人が増えていますが、辞めずに経験を積み重ねていけば、給料も増える可能性が広がります。
(毎日新聞 3月4日)

介護職不足がつづく要因は低い賃金水準にあると流布されているが、データを見る限り現実は違う。
介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」によると、介護職の退職理由は多い順に「職場の人間関係に問題があった」(34.3%)「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」(26.3%)「他に良い仕事・職場があった」(19.9%)「収入が少なかった」(16.6%)「将来の見込みが立たなかった」(13.2%)だった。
最も多い理由が人間関係で、賃金は4番目の理由である。一方、介護職の離職率が改善した理由をみると、ほぼ離職理由と重なっている。
多い順に「職場の人間関係がよくなった」(63.6%)「残業削減、有給取得促進、シフトの見直し等を進めた」(45.6%)「介護の質を高めるための意識を共有した」(37.8%)「賃金水準が向上した」(36.3%)「育児・介護との両立支援を充実させた」(36.1%)だった。
人間関係の改善が圧倒的に多い。この調査結果を踏まえると、介護職の確保には処遇改善も重要だが、それ以上に、人間関係の改善が必須であることがわかる。介護業界関係者は人手不足の理由を「人間関係に問題が多いからだ」とは言い難いだろうが、人間関係を改善する施策をもっと講じてほしい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。