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管理職に大降格時代 危機感が磨く骨太組織

リコーの一部管理職が緊張に震える冬を過ごしている。
「このままでは一般職に戻ってしまう」。2022年4月、3年以内に必要なスキルを習得しなければ、一般職に降格する制度が導入された。スキル習得の期限が1カ月半後に迫る。
当時、社員に占める管理職の割合が3割に達し、部下のいない名ばかり管理職も多くいた。そこで、職務内容に応じて賃金を決める「ジョブ型人事」を導入するのにあわせ、降格制度を設けた。
 第1弾として基準に満たさない約500人を「2軍」管理職にした。一定の成果を上げれば「1軍」に戻す。ふるわなければ管理職から外す。
 管理職の流動化が進めば、抜てき人事もしやすい。大山晃社長は「会社の成長と、社員の成長の好循環を目指す」と話す。
 日本で大降格時代の幕が開いた。30年かけて進んだ「脱・年功序列」が、最終章を迎えている。
外資系企業は成績が著しく低いと「PIP」と呼ばれる業務改善計画を会社と社員が話し合って作る。計画に基づいて行動し、結果が出なかった社員には降格や退職勧奨が待ち受ける。
(日本経済新聞 2月20日)

会社員にとって役職は既得権のように身分の保障を担保していた。実績主義に移行して以降も、たとえば部長に昇格して振るわなくても、部下のいない「部付部長」とか「専任部長」などの肩書が付与されて何とか体面を保てたが、降格人事が導入されると体面は配慮されない。
名刺の肩書も格下げが明らかになれば、営業職は肩身が狭くなって、実績を落としてしまう事態もあるだろうから、そこは配慮されるのか。あるいは社内で「〇〇君」「△△さん」の立場が逆転した場合、どう呼び合うのか。これは社内での呼称を「さん」付けで統一すればよいが、慣れるまで時間がかかるだろう。
昭和の時代から降格人事は珍しくないが、降格されて以降は、そのまま復活のチャンスに恵まれないことが通例だった。だがチャンスが与えられる人事制度が導入されば、降格をリスキリングに取り組む好機ととらえて奮起し、キャリアのV字回復を果たす社員がつづけば、組織の活力が上向くことは容易に察しがつく。
そもそも役職は芝居の役のようなものだと割り切ればよいのだが、役職には序列がともなうので、そう単純に割り切れない。会社員も公務員も序列からの解放は難しく、定年退職後も現職時代の関係について、自分と違う役職の人について「上司だった」「部下だった」という人が多い。同じ役職だった人を除けば「同僚だった」とはいわない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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