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老いる日本の取締役会 平均最高齢に、70歳以上18%

上場企業の取締役で高齢化が進んでいる。平均年齢は2011年の約59歳から24年に約62歳になり、70歳以上の比率は7%から18%に高まった。高齢役員は経営に関する経験値が高い一方、デジタルなどに弱い傾向があるとの指摘が出ている。幅広い年齢層から取締役を起用する「年齢の多様性」と株価の関連性は高いとの分析もある。取締役会の若返りが、企業の課題になっている。
(中略)
取締役の年齢と市場評価には関連性があるのか。24年に早稲田大学大学院の柳良平客員教授がアビームコンサルティング(東京・中央)と共同で調査した。大企業約100社の個社分析を基に、PBR(株価純資産倍率)との相関が認められたケースが多かった非財務指標をランキングしたところ、温暖化ガス排出量などを抑え「役員の平均年齢の若さ」が首位だった。
(中略)
 「年齢の多様性」を体現する日本企業がサンリオだ。20年に、社長が当時92歳の辻信太郎氏から孫で同31歳の辻朋邦氏に交代した。経営陣も若返り、取締役の平均年齢は20年の68歳から24年に51歳となった。年齢層も分散する。36歳の辻社長が最も若く、他の取締役は40代前半から60代半ばまでと年齢の幅が広がった。
(日本経済新聞 2月20日)

 役員定年制を導入している企業では、役員の定年を65歳や70歳に設定している例が多い。世代交代を踏まえた年齢の設定である。定年を設定しないと「実力者」による長期政権ができあがり、いつしか聖域が形成され、圧政が敷かれることは組織運営の法則のようなものだ。
 しかも定年を設定せずに各役員の再任がつづくと、上が詰まってしまい、次世代に役員としてリーダーシップを発揮する機会が廻ってこなくなる。有為な人材の流出も避けられない。創業者やオーナーでない限り、役員人事において生涯現役は、たとえ本人が望んでいても好ましくない。
しかし若返りを図るなかでも、ベテラン層のほうが適任である業務もある。法務や内部監査などリスクマネジメント関連業務で、この分野は長年の経験が大いに約に立つ。およそ10年前に取材した物流企業の例だが、役員の大半を40代が占めていたが、法務と総務の担当役員は50代後半だった。
同社の社長は「われわれ40代の役員や30代の部長には勢いがあるだろうが、暴走しやすく、それが社会的な観点で容認されるかどうかの認識が甘い。その点、ベテランの役員は、法令を遵守していても容認されない商行為の識別など、社会の論理を知っている」と話していた。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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