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「人手不足倒産」、2年連続で過去最悪を更新 特に厳しい「2業種」とは

人手不足を感じている企業の割合は、2024年12月時点で52.6%。新型コロナウイルスの感染拡大で一時的に緩和した2020年以降、急上昇して高止まりが続いている。「団塊世代」のほとんどが75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に代表されるように、労働者の高齢化も深刻化している。  
業種別では「建設業」(99件)が最多で、「物流業」(46件)が続き、時間外労働の上限規制を適用する「2024年問題」に直面した両業種で全体の約4割を占めた。そのほか「飲食店」(16件)、「美容業」(9件)、「労働者派遣業」(8件)、「警備業」(6件)なども増加した。  
倒産件数が最も多かった建設業は、今後も深刻な人手不足が想定される。景況感は良いものの、毎月勤労統計では総実労働時間や出勤日数などが減少傾向にある。背景には時間外労働の上限規制もあるが、人手不足で労働時間が減少した影響も大きいと考えられる。    
その他、高齢化も大きな課題だ。60歳以上の割合は建設業が23.9%で、全業種を大きく上回る。物流業も18.6%でやや低いものの、50歳以上の割合は49.5%と約半数にのぼる。今後も両業種の労働時間と就業者数は増加が見込みにくく、省力化・効率化が急がれる。
(ITmedia ビジネスオンライン 2月10日)

人手不足倒産の多い業種には介護も挙げられる。東京商工リサーチの調査によると、2024年に倒産した介護事業者は172社で、介護保険制度が創設された2000年以降で最多となった。人手不足倒産が多いというが、人手不足による廃業と事業所閉鎖を加えれば、ゆうに倒産件数の数十倍におよぶだろう。
その介護事業者のなかで採用にあまり苦労しない部門があるという。法人本部である。複数の事業所を展開する介護事業者は本部機能をたんなる事務方ではなく、マネジメント専門部門として強化する傾向にある。
そうした事業者の本部スタッフは新卒採用も中途採用も高学歴が多く、募集をかけて空振りに終わることはないという。
多くの事業者で、事務部門は介護報酬を稼がない間接部門という立場を理由に現場よりも下位に置かれ、事務スタッフの給与水準も介護職より低いケースが少なくない。おのずと採用に苦労しているが、事務部門を「法人本部」と位置づけ、スタッフを事務員ではなくマネジメントの専門職として処遇すると、大学院卒や大手企業出身が応募してくるようになる。
介護業界なので給与水準が恵まれているわけではないが、福祉マネジメントというノウハウが十分に確立されていない領域におもしろさを感じて応募する人もいるという。ただ、介護職が採用できなれば事業所運営に支障が出てしまうので、本部の魅力をアピールしても採用力の強化には結びつかない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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