2025/02/14
企業や官公庁の不正を告発した内部告発者を守る公益通報者保護法の改正を巡り、政府が公務員への「報復人事」に対しても刑事罰を導入する方針であることが5日、関係者への取材で分かった。改正法案に通報を理由とした公務員への不利益処分の禁止を明記し、2025年の通常国会で成立を目指す。
政府は公務員への不利益処分を同法で明確に禁じ、職員の処分に関与した公務員に刑事罰を適用できるようにする。民間企業と同様に行政機関の職員も通報をためらうことがないように整備することで制度の実効性を高める狙いがある。
対象となるのは民間企業の解雇にあたる「分限免職」や「懲戒処分」の意思決定関与者。企業で通報者に不利益処分をした個人と同様、6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金を科す。
現行法も通報を理由とした民間企業による解雇、降格や減給といった不利益な取り扱いは禁じている。一方、公務員については同法に明記がなく地方公務員法や国家公務員法ななどの規定を適用することになっていた。
(日本経済新聞 2月6日)
公益通報者に対する報復人事として、解雇、降格、減給は違法性を認定できるが、定期人事異動で通報者をミスマッチと思える部署に異動させる措置はどう認定するのだろうか。
報復人事をカモフラージュする意図での人事異動は公益通報者保護法が施行された当初から常套手段だった。それも突然の異動は不自然なので、定期人事異動に乗せて通報者を異動させる。
降格も減給もせず、閑職や転勤を発令して、やがて本人が依願退職を申し出ることを期待した措置で、めげずに勤務しつづけても復活の機会は与えられず、次なる報復人事として、これも定期人事異動で子会社に転籍させ、スムーズに減給に追い込む手段もある。突然の異動ではなく、しかも適材適所のシナリオを用意しておけば、人事権の濫用を回避しやすい。
こうした手の込んだ人事をどう取り扱ってゆくのだろうか。
公益通報者保護法が施行されたのは2006年である。それから20年近く経ってもなお定着していないのは、公益通報が組織に反旗を翻す行為とみなされているからだ。そもそも通報者が公益通報に踏み切るのは、職場内に、ネガティブ情報を報告して改善に結びつける動きを期待できないからである。
1986年に、中曽根内閣の後藤田正晴官房長官が部下たちに「悪い本当の事実を報告せよ」と訓示を述べたことは、危機管理の要諦として広く語り継がれてきた。報告を嫌がる体質の組織は危機に対して脆弱である。
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